障害者手帳があるので日常生活用具を使おうと思ったら、ケアマネジャーに「介護保険が先」と言われました。手帳があっても、そうなるのでしょうか。
手帳の有無だけでは決まりません。本人が介護保険を使えるか、その用具が介護保険の対象かを先に確かめ、日常生活用具についてはお住まいの自治体の扱いを確認します。
どちらを使うか、購入前に確認すること
- 介護保険で対応できる用具は、介護保険を優先する自治体の案内があります。手帳があれば日常生活用具を自由に選べる、という意味ではありません
- 介護保険にない用具や、介護保険の対象でない人の用具は、日常生活用具の対象になるか障害福祉の窓口へ相談します。対象になるとは限りません
- 日常生活用具の品目・対象者・基準額・自己負担・耐用年数は自治体によって異なります
- 国の通知は、日常生活用具に法律上の給付調整規定が適用されないことも明記しています。「すべて介護保険が先で、障害福祉は使えない」とは受け取らないでください
介護保険が先になるのは誰?
まず、介護保険を使えるのは誰ですか。
在宅で暮らす方について、国の通知は、介護保険の被保険者である65歳以上の障害者が要介護・要支援の状態になった場合、認定を受けて保険給付を受けられると説明しています。40〜64歳の医療保険加入者では、その状態の原因が特定疾病であることが関わります。特定疾病とは、介護保険で対象とされる、加齢に伴う病気です。
厚生労働省の通知には、「その要介護状態又は要支援状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身上の変化に起因する特定疾病によって生じた場合」とあります。年齢や手帳だけで利用は決まらないため、認定の確認は要介護認定とはを参照してください。
日常生活用具も、国が介護保険優先と決めているのですか。
国の通知は、障害福祉の「自立支援給付」と、市町村が行う「地域生活支援事業」を分けています。日常生活用具は地域生活支援事業であり、通知の「2.その他(2)」には、「法令上、給付調整に関する規定は適用がないものである。」とあります。そのうえで、従来の介護保険優先の取り扱いや通知の趣旨を踏まえた適切な運用を求めています。
たとえば多摩市の案内には、日常生活用具について「ただし、介護保険の対象となる方は介護保険制度が優先されます。」とあります。家族としては、介護保険で必要な支援を受けられるかを確認し、難しい事情があれば障害福祉の窓口にも伝える、という進め方になります。
重なりやすい用具の表
ベッドや入浴の用具は、借りるものと買うものが違いますか。
はい。介護保険の分類は、厚生労働省の貸与の種目を定める告示と販売の種目を定める告示で確認できます。日常生活用具と名前が似ていても、対象となる製品の範囲まで同じとは限りません。
| 用具 | 介護保険での扱い | 日常生活用具としての自治体の例 |
|---|---|---|
| 特殊寝台 | 貸与。特殊寝台付属品も別の貸与種目 | 多摩市は特殊寝台を掲載し、備考に「介護保険優先」 |
| 特殊マット | 貸与の種目にある「床ずれ防止用具」(空気マット、水等によるマット)や「特殊寝台付属品」に当たる製品は貸与。自治体の「特殊マット」と同じ製品とは限らないため、製品ごとにケアマネジャーへ確認 | 多摩市は備考に「介護保険優先」。名古屋市は介護保険の対象者について給付できない旨を明記 |
| 体位変換器 | 貸与 | 多摩市は備考に「介護保険優先」。名古屋市も介護保険の対象者について給付できない旨を明記 |
| 入浴補助用具 | 特定福祉用具販売。購入費の給付で、貸与ではない | 多摩市は備考に「住宅改修するものは除く。介護保険優先」。名古屋市も介護保険の対象者について給付できない旨を明記 |
| 移動用リフト | 本体は「移動用リフト(つり具の部分を除く。)」として貸与。つり具の部分は販売 | 多摩市は移動用リフトの備考に「住宅改修するものは除く。介護保険優先」。名古屋市も介護保険の対象者について給付できない旨を明記 |
多摩市の品目表の例であり、全国共通の給付表ではありません。同市の特殊寝台の対象欄には「下肢・体幹1・2級」、年齢欄には「6歳以上」と記載されていますが、ほかの条件も含めて確認が必要です。他の自治体へこの条件をそのまま当てはめないでください。
名古屋市の案内は、「介護保険の第1号被保険者及び特定疾病に該当する第2号被保険者については、入浴補助用具、移動用リフト、移動・移乗支援用具、便器、特殊マット、体位変換器、特殊尿器を給付することはできません。」と明記しています。これは名古屋市の運用です。お住まいの自治体の品目表と注意書きを確認してください。
認定があっても、すべての用具を借りられるわけではありません
厚生労働省は、貸与のうち手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ以外について、「要支援及び要介護1の方は、原則給付の対象外となります。」と説明しています。身体の状態等によって給付対象になる場合もあるため、特殊寝台やリフトが必要なときは、例外の確認をケアマネジャーに相談してください。介護保険で借りられないことだけで、日常生活用具の給付が決まるわけではありません。
根拠は厚生労働省「福祉用具・住宅改修」です。入浴用いすなどの購入はシャワーチェアを介護保険で買うとき、制度全体は貸与と販売の違いへ進んでください。
介護保険にない用具は日常生活用具になる?
介護保険の一覧にないものなら、日常生活用具で用意できますか。手帳がない家族もいます。
介護保険の対象外であることだけでは、日常生活用具の対象とは決まりません。厚生労働省の概要は対象者を「日常生活用具を必要とする障害者、障害児、難病患者等」とし、難病患者等は政令に定める疾病に限るとしています。手帳がない場合も、対象疾病や自治体の要件に当てはまるかを窓口で確認してください。
多摩市も「障害者総合支援法第4条に定める難病患者のうち、必要と認められる方については給付対象となる場合があります。」と案内しています。これは多摩市の例で、手帳がない方すべてに給付されるという説明ではありません。
ベッドの上で体を洗う機器はどうでしょうか。
個別の機器が自治体のどの品目に当たるか、対象となる性能や本人の条件を満たすかを確認する必要があります。カタログと、浴室での入浴が難しい事情を窓口に伝えてください。「入浴に使う機器」というだけで、入浴補助用具の給付対象とは判断できません。
介護保険と日常生活用具の併用も相談できますか。
別の用具をそれぞれの制度で用意できるか、介護保険では対応できない事情を日常生活用具で検討できるかは、障害福祉の窓口へ相談してください。同じ用具の費用を両方から受け取れる、または介護保険で足りない額を自動的に補える、という意味ではありません。必要な用具ごとに、利用中の制度と対象外になった理由を伝えます。
手帳があるのにレンタルできないと言われたら
障害者手帳を見せれば福祉用具をレンタルできると思っていました。
介護保険の貸与では、手帳そのものが利用資格になるわけではありません。要介護・要支援認定や、品目ごとの給付条件を確認します。認定前なら、まず認定申請と必要な用具について相談し、給付が決まったつもりで契約しないようにしてください。
国の通知の「2.その他(1)」も、介護保険サービスが利用可能な障害者が認定を申請していない場合等について、介護保険優先の説明と申請の周知を求めています。未申請なら日常生活用具を選べる、という受け止め方は避けましょう。申請中に急いで用具が必要なときも、利用開始の時期と自己負担の見通しをケアマネジャーや介護保険窓口へ確認してください。
購入なら、手帳を使えるのでしょうか。
購入も、介護保険の「特定福祉用具販売」なのか、自治体の「日常生活用具」なのかを先に確かめます。介護保険の入浴補助用具は購入費給付の対象なので、購入の条件と手順を確認してください。自費で借りるサービスの有無は、公的制度の給付対象とは分けて尋ねましょう。
補装具の場合は?
車いすや歩行器も、同じ相談になりますか。
障害福祉で車いす・歩行器・歩行補助つえなどを検討するときは、日常生活用具とは別の「補装具費支給制度」が関わります。国の通知は、重なる品目では介護保険給付を優先するとしつつ、医師や身体障害者更生相談所等が身体状況への個別対応を必要と判断した場合は、補装具費として支給して差し支えないとしています。
2026年9月10日付けの厚生労働省の「介護保険最新情報」(Vol.1542)でも、介護保険の被保険者が補装具費支給制度を利用できる場合を含めた説明や、関係職種間での情報共有を求めています。詳細は補装具費支給制度とはへ進み、これまで使ってきた用具がある場合は、そのことも伝えてください。
順番の目安
両方の制度を、自分で調べ切ってから相談する必要がありますか。
調べ切らなくても大丈夫です。「ベッドから起き上がるとき」「浴槽に入るとき」など、困る場面から伝えてください。次は相談の順番の目安で、申請手続きそのものではありません。
用具を決める前の相談の順番
- 担当のケアマネジャーに、介護保険で対応できる用具と、貸与・購入の区分を確認する
- 介護保険で対応できない用具や事情を、市区町村の障害福祉の窓口に伝え、日常生活用具の対象になるか確認する
- 利用する制度と購入前の手続き、見積もりを確認してから、注文・契約へ進む
日常生活用具は買う前に相談を
多摩市は「購入後の助成はできません。必ず事前にご相談ください。」と案内しています。介護保険の購入費給付とは手続きが異なるため、先に買ってから制度を選ぶのは避けてください。
日常生活用具の申請の流れは制度の全体像、買ってしまった場合は購入後の申請についてで確認できます。ケアマネジャーに事情を伝える準備は福祉用具の相談で伝えることを参照してください。
どこに相談すればいい?
ケアマネジャーがいない場合は、どこから始めればよいでしょうか。
高齢の家族の介護や認定については地域包括支援センターへ、日常生活用具の対象については市区町村の障害福祉の窓口へ相談してください。介護保険窓口にも、本人が対象かを確認できます。担当のケアマネジャーがいる方は、障害福祉の窓口での回答も共有すると、必要な用具を一緒に検討しやすくなります。
相談時にそのまま使える質問メモ
- 本人の年齢・認定・手帳や対象疾病の状況では、どちらの制度から確認すればよいですか?
- この用具は介護保険の貸与ですか、購入ですか? 本人の状態で給付対象になりますか?
- 介護保険で対応できない事情がある場合、日常生活用具として検討できますか? 自治体の根拠や条件も教えてください。
- 別の用具で介護保険を利用していますが、この用具に日常生活用具を使えますか? 基準額・自己負担・耐用年数も確認したいです。
- 注文や契約の前に必要な申請・決定は何ですか? 両方の担当窓口で確認が必要ですか?
まとめ
| 制度名 | 窓口 | 注意点 | 公式リンク |
|---|---|---|---|
| 介護保険の福祉用具貸与 | ケアマネジャー・介護保険窓口 | 特殊寝台・リフト本体など。認定と品目の条件を確認 | 厚生労働省 |
| 介護保険の特定福祉用具販売 | ケアマネジャー・介護保険窓口 | 入浴補助用具・リフトのつり具などは購入。買う前に相談 | 販売種目の告示 |
| 日常生活用具給付等事業 | 市区町村の障害福祉の窓口 | 介護保険との関係、対象者・品目・費用は自治体に確認 | 厚生労働省の概要 |
| 補装具費支給制度 | 市区町村の障害福祉の窓口 | 日常生活用具とは別。介護保険との関係も個別に確認 | 厚生労働省の通知 |
手帳があるかどうかだけでなく、必要な用具と介護保険で対応できる範囲を確かめるのですね。
はい。介護保険で難しいと言われた場合も、その理由を障害福祉の窓口に伝えて相談してください。購入前に、本人に必要な用具と利用する制度を確認しましょう。
出典・参考
- 厚生労働省「自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」平成19年3月28日通知(改正後の本文)
- 厚生労働省「日常生活用具給付等事業の概要」・告示第529号
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
- 厚生労働省「福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目」告示第93号
- 厚生労働省「特定福祉用具販売等に係る種目」告示第94号
- 多摩市「日常生活用具の制度」
- 名古屋市「日常生活用具の給付」
- 厚生労働省「補装具費支給制度と介護保険制度の適用関係等について」2026年9月10日付け 介護保険最新情報 Vol.1542
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