家族

重い障害のある家族がいます。体が大きくなって、家のお風呂に入れるのが難しくなってきました。障害のある人向けの入浴サービスはあるのでしょうか。

編集部

あります。自宅で入浴できないときに考えられる手段は、大きく分けて次の4つです。どれも窓口はお住まいの市区町村の障害福祉の担当課です。ただし、介護保険の要介護認定を受けている方は、介護保険の訪問入浴が先になる自治体が多くあります。

自宅で入浴できないときの4つの手段

  1. 訪問入浴サービス: 移動入浴車で浴槽を家に持ち込み、部屋で入浴する(市区町村の事業)
  2. 施設入浴サービス: 送迎つきで、機械浴槽のある施設に行って入浴する(実施している自治体のみ)
  3. ヘルパーの入浴介助: 障害福祉サービスの居宅介護・重度訪問介護で、家のお風呂での入浴を手伝ってもらう
  4. 用具と給付: 入浴補助用具やリフトを日常生活用具の給付で用意し、家での入浴を続ける
編集部

このうち訪問入浴サービスと施設入浴サービスは、対象や回数、自己負担が自治体ごとに大きく違います。ここでは自治体の公式ページの記載を例に、どこが違うのかを順に見ていきます。

障害者の訪問入浴サービスとは

家族

訪問入浴サービスとは、どのようなものですか。

編集部

移動入浴車で専用の浴槽を自宅に運び込み、部屋の中で入浴を手伝ってもらうサービスです。障害者総合支援法にもとづいて市区町村が行う「地域生活支援事業」の一つで、厚生労働省の事業一覧では任意事業(実施するかどうかを市区町村が決める事業)に入っています。そのため、実施していない市区町村もあります。

編集部

厚木市の要綱では、「看護師又は准看護師若しくは介護職員が第7条に規定する対象者宅を訪問し、浴槽を提供して行われる入浴の介護」と定められています。杉並区の案内では、「看護師などの入浴介助者が洗身、洗髪、洗顔などを行います。なお、入浴の際、家族などの立ち会いが必要です。」とされています。

家族

家族の立ち会いが必要なのですね。

編集部

はい。杉並区のほか、北区でも家族等の介助が得られない方は対象外とされています。家族の立ち会いや介助が条件になっていないか、申し込みの前に確認しておくと安心です。また、北区の案内には「ご自宅の水道と電気を使用します。」とあり、家の水道と電気を使うことも知っておくとよいでしょう。

対象になる人

家族

どのような人が対象になりますか。

編集部

今回確認した自治体の多くで共通しているのは、「身体障害者手帳の1級・2級など重い障害がある」「家族の介助だけでは家で入浴できない」「医師が入浴してよいと認めている」の3点です。そのうえで、年齢や手帳の種類、介護保険との関係が自治体ごとに違います。

自治体主な対象(公式ページの記載)
東京都杉並区65歳未満で、身体障害者手帳1級・2級、愛の手帳1度・2度の方で、家庭および公衆浴場での入浴が困難な方
東京都青梅市身体障害者手帳1〜2級または愛の手帳1〜2度。ホームヘルプサービス等の他の制度での入浴が困難で、医師に入浴可能と認められ、要介護・要支援の認定を受けていない方
東京都北区肢体又は体幹機能障害1・2級で、家族等の介助のみでは入浴が困難な方(40歳以上で要介護1〜5の方などは対象外)
愛知県名古屋市おおむね15歳以上65歳未満で、下肢又は体幹機能障害1・2級の手帳があり、愛護手帳1度・2度を持つ方か、3か月以上全面介助を要する状態が続いている方
大阪府大阪市身体障がい者手帳1級又は2級で、概ね18歳以上65歳未満、介護者の介助だけでは入浴が困難な方

⚠️ 対象の条件は自治体によって異なります

上の表は一部の自治体の例です。知的障害の手帳(愛の手帳など)を対象に含めるか、子ども(障害児)を対象にするか、年齢の下限・上限をどうするかは、自治体によって異なります。お住まいの市区町村の要件を、障害福祉の担当課で確認してください。

家族

子どもでも使えますか。

編集部

自治体によります。青梅市は「重度心身障害者(児)」を対象にしたサービスとして案内しています。一方で、大阪市は概ね18歳以上、名古屋市はおおむね15歳以上としています。お子さんの場合は、まず窓口で「障害児も対象になりますか」と聞いてみてください。

回数と自己負担

家族

週に何回くらい使えて、費用はどのくらいかかりますか。

編集部

ここも自治体によって大きく違います。公式ページの記載をいくつか並べます。

自治体回数自己負担
東京都杉並区週1回、年52回まで課税世帯は入浴費用の3パーセント(474円、令和8年4月1日現在)
東京都北区年間58回(原則毎週1回、7月〜9月は6回の追加利用が可能)原則として費用の1割。生活保護世帯・低所得世帯は1割の負担なし
神奈川県横浜市週2回まで(6月〜9月は週3回まで)原則一割負担。収入額に応じた減免あり
愛知県名古屋市利用券が年間104枚まで世帯の所得により異なる
大阪府大阪市年105回を限度に、月10回まで本人と扶養義務者がそれぞれ1回につき0円〜400円(所得による)
大阪府吹田市(公式ページに回数の記載なし)負担上限月額は市民税課税世帯4,000円、非課税・生活保護世帯0円
編集部

夏の間だけ回数を増やせる自治体もあります。北区は7月〜9月に6回の追加、横浜市は6月〜9月に週3回まで、厚木市の要綱では「7月から9月までの間に限り、この事業以外の方法で入浴ができない場合は、週2回できるものとする」とされています。

介護保険の訪問入浴とどちらを使うか

家族

介護保険にも訪問入浴がありますよね。どちらを使えばいいのでしょうか。

編集部

介護保険の要介護・要支援の認定を受けている方は、介護保険の訪問入浴介護が先になる自治体が多くあります。たとえば新潟市の案内には、「介護保険適用者は、(介護予防)訪問入浴介護をご利用いただくことになります。」とあります。名古屋市も、介護保険の要支援・要介護の認定を受けた方は対象にならないとしています。

家族

65歳になったら、障害の訪問入浴は使えなくなるのですか。

編集部

今回確認した自治体では、杉並区・名古屋市・大阪市・吹田市・厚木市が65歳未満を対象にしていました。こうした自治体では、65歳以降は介護保険の訪問入浴に切り替わることになります。ただし扱いは自治体によって異なります。杉並区のように、介護保険によるサービスを受けている方でも年14回までは使えるとしている自治体もあります。介護保険の訪問入浴の料金は、訪問入浴介護の料金はいくら?で詳しく紹介しています。

施設入浴サービス

家族

家に浴槽を運んでもらう以外の方法はありますか。

編集部

送迎つきで、機械浴槽(寝たまま、または座ったまま入れる特殊な浴槽)のある施設に行って入浴する「施設入浴サービス」を行っている自治体があります。横浜市の案内では、「住居形態等の理由により訪問入浴サービスが利用困難な場合に、寝台車の送迎により市内にある特別養護老人ホーム等の特殊浴槽によって、入浴の機会を提供します。(週1回まで)」とされています。

編集部

部屋が狭くて浴槽を置けない、集合住宅で搬入が難しい、といった場合の選択肢になります。実施しているかどうか、どの施設を使えるかは自治体ごとに違います。

ヘルパー(居宅介護・重度訪問介護)の入浴介助

家族

家のお風呂で、ヘルパーさんに手伝ってもらうことはできますか。

編集部

できます。障害福祉サービスの居宅介護は、厚生労働省の説明で「居宅において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行います。」とされています。重度の肢体不自由などで常時介護が必要な方には、重度訪問介護というサービスもあります。

編集部

ただし、ヘルパーの入浴介助を受けていると、訪問入浴サービスの対象外になる自治体があります。青梅市は「障害福祉サービスにおける居宅介護を受給し、自宅での入浴が可能な方は対象となりません。」としています。どちらを使うかは、相談支援専門員(障害福祉サービスの利用計画を一緒に考える専門職)や窓口と相談して決めるのがよいでしょう。サービスを使うまでの流れは障害福祉サービスを利用するにはで紹介しています。

家で入浴を続けるための用具と給付

家族

できれば、家でも入浴やシャワーを続けたいです。用具の補助はありますか。

編集部

市区町村の日常生活用具給付等事業で、入浴補助用具や移動用リフトなどが給付の対象になっている場合があります。対象の品目、基準額、自己負担は自治体ごとに決まっています。仕組みは日常生活用具給付等事業とはで詳しく紹介しています。お子さんの場合の用具の種類や基準額の例は、障害児の入浴補助具で紹介しています。

⚠️ 用具は購入前に申請を

日常生活用具の給付は、申請して市区町村の決定を受けてから購入・受領するのが基本の順番です。先に購入すると給付の対象外になることがあります。検討している用具があれば、購入する前に障害福祉の担当課に相談してください。

編集部

お風呂場まで移動するのが難しい場合は、ベッドの上で体や髪を洗う方法もあります。家庭の工夫・サービス・機器を比べた記事として、寝たきりの体を自宅で洗う方法とベッド上で体を洗い流す機器の選び方があります。

どの手段が合うかの目安

  • 浴槽に入れたい・お湯につかりたい: 訪問入浴サービス、施設入浴サービス
  • 家のお風呂で入浴できるが、介助の人手が足りない: ヘルパーの入浴介助、入浴補助用具・リフト
  • お風呂場までの移動が難しく、入浴の間の日も清潔を保ちたい: 清拭、ベッド上で洗う方法
編集部

体調や医療的ケア(たんの吸引や胃ろうなど)の状況によっては、入浴の方法に注意が必要です。入浴してよいか、どの方法が合うかは、主治医や訪問看護師に相談してください。

申し込みの流れ

訪問入浴サービスを申し込むときの一般的な流れ

  1. お住まいの市区町村の障害福祉の担当課に、訪問入浴サービス・施設入浴サービスがあるかを問い合わせる
  2. 対象の条件(手帳の等級・年齢・介護保険との関係)と、回数・自己負担を確認する
  3. 主治医に入浴してよいかを確認し、自治体の様式の意見書や診断書を書いてもらう(必要な自治体の場合)
  4. 申請書に手帳などを添えて申請する
  5. 自治体が利用の可否を決め、通知が届く
  6. 事業者と日程を調整して利用を始める(年1回の更新が必要な自治体もある)
編集部

厚木市の要綱では、申請書に「健康診断書、日常生活動作能力調査票及び誓約書」を添えるとされています。杉並区は、感染症にかかっている場合に医師が記入する「入浴サービス可否意見書」を求めています。必要な書類は自治体ごとに違うので、最初の問い合わせのときに確認しておくと手戻りが少なくなります。

どこに相談すればいい?

家族

まずはどこに相談すればいいでしょうか。

編集部

訪問入浴サービスや施設入浴サービスは、お住まいの市区町村の障害福祉の担当課が窓口です。障害福祉サービスを使っている方は、担当の相談支援専門員にも相談できます。介護保険の認定を受けている方はケアマネジャーへ、入浴してよいかどうかは主治医や訪問看護師へ相談してください。

相談時にそのまま使える質問メモ

  1. この市区町村に、障害のある人向けの訪問入浴サービスや施設入浴サービスはありますか?
  2. 手帳の等級や年齢など、対象の条件を教えてください。障害児も対象になりますか?
  3. 週(年)に何回まで使えますか? 夏の間に回数を増やせますか?
  4. 1回の自己負担はいくらですか? 所得による減免はありますか?
  5. ヘルパーの入浴介助や介護保険のサービスと、一緒に使えますか?
  6. 申請に必要な書類(医師の意見書など)と、更新の手続きを教えてください。
  7. 入浴補助用具やリフトは、日常生活用具の給付の対象になりますか?

まとめ

手段内容窓口注意点
訪問入浴サービス移動入浴車で浴槽を家に持ち込み入浴する(地域生活支援事業の任意事業)市区町村の障害福祉の担当課実施の有無・対象・回数・負担が自治体によって異なる。家族の立ち会いが必要な自治体もある
施設入浴サービス送迎つきで機械浴槽のある施設で入浴する市区町村の障害福祉の担当課実施している自治体のみ
居宅介護・重度訪問介護ヘルパーが家での入浴を介助する市区町村の障害福祉の担当課、相談支援専門員利用していると訪問入浴の対象外になる自治体がある
日常生活用具の給付入浴補助用具・リフトなどの給付市区町村の障害福祉の担当課購入前に申請する。対象品目・基準額は自治体ごとに異なる
介護保険の訪問入浴介護要介護・要支援の方の訪問入浴ケアマネジャー、地域包括支援センター介護保険の認定を受けている方はこちらが先になることが多い
家族

自治体によって違うことが分かったので、まず窓口で「入浴サービスはありますか」と聞くところから始めてみます。

編集部

はい。回数や負担の数字は、この記事の例とお住まいの自治体で違うことがあります。質問メモを持って、障害福祉の担当課に確認してみてください。

出典・参考