障害のある子どもを毎日抱っこしてお風呂に入れています。体が大きくなってきて、腰がつらくなってきました。お風呂で使える補助具にはどんなものがありますか。
子どものお風呂で使う用具には、主に次のような種類があります。成長や体の状態、浴室の広さによって合うものが変わります。費用は、市区町村の日常生活用具の給付を使える場合があります。子どもは介護保険の対象にならないため、窓口は市区町村の障害福祉の担当課です。
子どもの入浴で使われる主な用具
- シャワーチェア(バスチェア): 洗い場で子どもを寝かせたり座らせたりして体を洗う椅子
- シャワーキャリー: タイヤの付いたシャワーチェア。部屋からお風呂まで座ったまま移動できる
- 入浴担架・リフト: 子どもを抱え上げずに、浴槽への出入りや移動を助ける
- 浴槽: 家の浴槽が使いにくい場合の浴槽(自治体によって給付の品目にある)
- ベッドの上で洗う方法・機器: お風呂場まで移動するのが難しいとき
⚠️ 給付を使うなら、購入する前に申請を
日常生活用具の給付は、申請して市区町村の決定を受けてから購入するのが基本の順番です。港区の案内には「購入後の申請は、給付の対象になりません。」とあります。気になる用具が見つかったら、買う前に窓口へ相談してください。
用具の種類と、向いている場面
どれを選べばいいのか、見当がつきません。
国立保健医療科学院の研究班が作った「子どもの安全入浴ガイドブック」(2012年3月発行)では、6〜18歳の肢体不自由児の親へのアンケートをもとに、お風呂での介助のヒヤリ・ハットでもっとも多いのは「転ぶ・落とす・すべる」で、子どもを抱っこしながら移動するときに多いとされています。用具は「抱っこの時間を減らす」ためのもの、と考えると選びやすくなります。
| 方法・用具 | できること | 向いている場面 | 合わない・注意が要る場面 |
|---|---|---|---|
| 洗い場にマットを敷く(家庭の工夫) | 子どもを寝かせて洗える | 子どもが小さいうち。まず試せる | 滑りやすい。介助者が床にかがむ姿勢になる |
| シャワーチェア | 体を洗う間、親の両手が空く | 抱っこしたまま洗っている | 体型や成長に合わないと姿勢が崩れる。収納場所が要る |
| シャワーキャリー | 部屋からお風呂まで座ったまま移動できる | 浴室までの移動の抱っこがつらい | 数mmの段差でも引っかかる。段差のない家向き |
| 入浴担架・リフト | 抱え上げずに浴槽へ出入りできる | 子どもが重く、一人で介助している | 設置する場所や吊り具の扱いを先に確認する必要がある |
| 訪問入浴などのサービス | 浴槽を家に運び入れて入浴する | 家のお風呂では難しくなった | 実施の有無・回数は自治体ごとに異なる |
| ベッドの上で洗う | 移動せずに体や髪を洗える | お風呂場までの移動が難しい | 湯船にはつかれない |
ガイドブックでは、シャワーチェアを使うと抱っこしている親の両手を子どもから離せるので介助が楽になる、と紹介されています。シャワーキャリーについては、数mmの段差でも引っかかるため、段差のない場所で使うことを勧めています。リフトは、子どもの体格が大きくなり親がひとりで介助するときに有効な場合がある一方、設置する環境や吊り具の着け方、介助の流れを先に理解してから設置するよう書かれています。
訪問入浴など、用具以外の入浴の手段は障害者の入浴サービスとはで、ベッドの上で洗う方法は寝たきりの体を自宅で洗う方法とベッド上で体を洗い流す機器の選び方で紹介しています。
選ぶときの確認点
実際に選ぶとき、どこを見ればいいですか。
ガイドブックでは、シャワーチェアを選ぶポイントとして「子どもの体型や成長に合わせる」「高さ、素材、収納を考える」の2つが挙げられています。これに、家と介助する人の状況を加えて確認すると、合わない用具を選ぶことを減らせます。
選ぶときの確認点
- 体格と成長: 今の身長・体重と、数年後も使えるか。リクライニング、ヘッドサポート、ベルトなどで調整できるか
- 姿勢: 座った姿勢を保てるか、寝た姿勢のほうが安定するか
- 浴室: 洗い場の広さ、出入口の段差、扉の幅
- 介助する人: 腰や膝への負担、一人で介助するか二人か
- 手入れ: 水はけがよいか、乾かしやすいか、軽くて片付けやすいか
- 医療的ケア: たんの吸引や胃ろうなどがある場合の姿勢や時間。入浴の方法は主治医や訪問看護師に相談する
ガイドブックは、子どもの体格や家族の状況、住まいはひとりひとり違うので、基本的には個別に考えることになるとしています。そのうえで、介助方法を見直す、情報を集める、リハビリセンターやメーカーなどから福祉用具を借りて試しに使ってみる、という段階的な進め方を勧めています。
日常生活用具の「入浴補助用具」とは
日常生活用具の給付では、どんな用具が対象になるのですか。
日常生活用具給付等事業は、市区町村が行う地域生活支援事業のうち、必ず実施する事業(必須事業)の一つです。厚生労働省の告示では、用具の種類のひとつ「自立生活支援用具」の例として入浴補助用具が挙げられています。対象になる人や品目の細かい決まりは、市区町村が要綱や一覧表で定めています。
たとえば朝霞市の一覧表では、入浴補助用具の対象者を「下肢または体幹機能障害により身体障害者手帳の交付を受けた身体障害児・者であって、入浴に介助を必要とするもので原則として3歳以上のもの」、用具の性能を「入浴時の移動、座位の保持、浴槽への入水等を補助でき、障害児または介助者が容易に使用し得るもので、設置に当たり住宅改修を伴うものを除く」としています。
入浴補助用具のほかに、入浴担架、移動用リフト、浴槽(湯沸器を含む)を品目にしている自治体もあります。仕組み全体は日常生活用具給付等事業とはで紹介しています。
入浴補助用具の基準額はいくら?
給付には上限があるのですか。
あります。品目ごとに「基準額」と「耐用年数」が決められていて、給付は基準額の範囲で受けられます。今回確認した3つの自治体では、入浴補助用具の基準額はいずれも90,000円でした。
| 自治体 | 入浴補助用具 | 入浴担架 | 移動用リフト | 浴槽 |
|---|---|---|---|---|
| 埼玉県朝霞市 | 90,000円・8年(原則3歳以上) | 82,400円・5年(1級・2級、原則3歳以上) | 159,000円・4年(1級・2級、原則3歳以上) | - |
| 東京都港区 | 90,000円・8年(3歳以上) | 82,400円・5年(洋式、3歳以上) | 300,700円・4年(3歳以上) | 浴槽(湯沸器含む)141,200円・8年(学齢児以上) |
| 埼玉県狭山市 | 90,000円(3歳以上) | 82,400円(1〜2級、3歳以上) | 159,000円(1〜2級、3歳以上) | - |
自己負担について、港区は「原則、基準額の範囲でかかった費用の1割が利用者負担となります。(ただし、月額の負担上限額があります。)生活保護、住民税非課税の人は無料です。品目の価格が基準額を超えた場合は、超えた額は全額利用者負担となります。」としています。
⚠️ 基準額・対象年齢・負担は自治体によって異なります
上の表は一部の自治体の例です。対象になる障害の程度や年齢、基準額、自己負担の割合は、お住まいの市区町村によって異なります。品目ごとに耐用年数も決められています。成長して体に合わなくなったときに買い替えられるかどうかも、窓口で確認しておくと安心です。
補装具・介護保険の用具との違い
介護保険で入浴の用具を買えると聞いたことがあります。子どもでも使えますか。
使えません。介護保険で入浴補助用具の購入費が支給されるのは、健康長寿ネットの説明では「65歳以上もしくは40歳以上で特定疾患などがあり、要介護認定を受けている方」です。子どもの入浴の用具は、障害福祉の制度で考えることになります。
障害福祉の制度には、日常生活用具のほかに「補装具」もあります。補装具は体に合わせて作り、長い期間使う用具で、国立障害者リハビリテーションセンターの資料では、身体障害児だけが対象の種目として座位保持椅子・起立保持具・頭部保持具・排便補助具が挙げられています。入浴で使う椅子が日常生活用具と補装具のどちらの対象になるかは、申請の前に窓口で確認してください。補装具の仕組みは補装具費支給制度とはで紹介しています。
申請の流れ
入浴補助用具を給付で用意するときの一般的な流れ
- 市区町村の障害福祉の担当課に、入浴補助用具などが給付の対象になるかを相談する
- 対象者の条件(障害の部位・程度、年齢)と、基準額・耐用年数・自己負担を確認する
- 福祉用具を扱う事業者に相談し、用具を選んで見積もりを取る(試せる場合は試してから)
- 申請書と見積書などを出す(必要な書類は自治体によって異なる)
- 市区町村の給付の決定を待つ
- 決定のあとに、事業者から用具を受け取る
試してから選ぶには
高い用具なので、合わなかったらと思うと不安です。
リハビリテーションセンターや、福祉用具を扱う事業者・メーカーで、用具を見たり借りたりできる場合があります。通っている療育機関や病院の作業療法士・理学療法士(体の動きや姿勢を専門にするリハビリの専門職)に相談すると、子どもの姿勢に合うかどうかを一緒に見てもらえることがあります。障害福祉サービスを使っている方は、相談支援専門員にも相談できます。
どこに相談すればいい?
給付の対象や手続きは、市区町村の障害福祉の担当課が窓口です。用具が体に合うかは、作業療法士・理学療法士や福祉用具を扱う事業者へ、入浴してよいか・どの姿勢がよいかは主治医や訪問看護師へ相談してください。
相談時にそのまま使える質問メモ
- 子どもの入浴で使う用具(シャワーチェア・シャワーキャリー・リフトなど)は、日常生活用具の給付の対象になりますか?
- 対象になる障害の程度と年齢を教えてください。
- 入浴補助用具の基準額、耐用年数、自己負担はいくらですか?
- 姿勢を保つ椅子は、日常生活用具と補装具のどちらで申請しますか?
- 申請に必要な書類(見積書・医師の意見書など)を教えてください。
- 成長して体に合わなくなったとき、耐用年数の前でも買い替えられますか?
- 用具を試せる場所や、相談できる専門職を紹介してもらえますか?
まとめ
| 項目 | 内容 | 窓口・注意点 |
|---|---|---|
| 主な用具 | シャワーチェア、シャワーキャリー、入浴担架、移動用リフト、浴槽 | 成長・姿勢・浴室の広さ・介助する人の状況で選ぶ |
| 使える制度 | 日常生活用具給付等事業(入浴補助用具など) | 市区町村の障害福祉の担当課。購入前に申請する |
| 基準額の例 | 入浴補助用具90,000円・耐用年数8年(朝霞市・港区など) | 対象年齢・基準額・負担は自治体によって異なる |
| 補装具 | 座位保持椅子など、体に合わせて作る用具 | どちらの制度かは窓口で確認 |
| 介護保険 | 子どもは対象外 | 65歳以上、または40歳以上で特定疾病がある要介護認定者 |
| 選ぶ前に | 試してから選ぶ | 作業療法士・理学療法士、福祉用具の事業者、相談支援専門員 |
用具を選ぶ前に、まず窓口で対象と基準額を聞いてみます。
はい。用具は成長とともに合わなくなることもあります。耐用年数や買い替えの考え方も、あわせて確認しておくと安心です。
