母を自宅で介護しています。最近、私ひとりではお風呂に入れてあげられなくなってきました。母に申し訳なくて、自分を責めてしまいます。
最初にお伝えしたいことがあります。入浴の介助は、在宅介護の中でも特に体への負担が大きい作業です。家族だけで続けられなくなるのは自然なことで、あなたの努力が足りないわけではありません。そして、選択肢は「家族ががんばる」以外にいくつもあります。
この記事でわかる選択肢の全体像
- 家庭でできる工夫(全身浴にこだわらない)
- 公的サービス(訪問入浴介護・デイサービスの入浴)
- 制度・給付(入浴補助用具の購入費支給など)
- 入浴を助ける用具という選択肢
- 相談先と、そのまま使える質問メモ
まず、家庭でできる工夫から
毎日お風呂に入れないと、と思うと苦しいです。
毎日の全身浴にこだわらなくて大丈夫です。体調や介助の余力に合わせて、足だけをお湯につける足浴、手浴、蒸しタオルでの清拭(せいしき)を組み合わせる方法があります。市販の清拭剤や、水を使わないドライシャンプーも役に立ちます。
清拭だけでも大丈夫なんでしょうか。
正直にお伝えすると、清拭だけでは汚れやにおい、ご本人の「お湯につかりたい」という気持ちまではカバーしきれません。だからこそ、家庭の工夫だけで抱え込まず、次に紹介するサービスや制度を組み合わせることが大切です。
公的サービス: 訪問入浴介護とデイサービスの入浴
自宅にお風呂に入れに来てくれるサービスがあると聞いたことがあります。
介護保険の「訪問入浴介護」ですね。看護職員と介護職員が自宅を訪問し、持参した専用の浴槽で入浴を介助してくれるサービスで、要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた方が利用できます。浴室まで移動できない方や、家族だけでの入浴が難しい方に向いています。
デイサービスでもお風呂に入れてもらえますよね。
はい。通所介護(デイサービス)や通所リハビリの入浴を利用回数の軸にして、間の日を足浴や清拭でつなぐ組み立ては、多くのご家庭で使われている現実的な方法です。回数を増やせるかどうかは、ケアプラン次第なのでケアマネジャーに相談してみてください。
なお、64歳以下で重度の身体障害のある方は、介護保険とは別に自治体の入浴サービスの対象になる場合があります。たとえば横浜市には障害者入浴サービス(訪問入浴・施設入浴)があります。
制度・給付: 用具の購入にお金の支援があります
シャワーチェアのような道具は、全部自費で買うしかないのでしょうか。
介護保険には「特定福祉用具販売」という仕組みがあり、シャワーチェア(入浴用いす)や浴槽用手すりなどの入浴補助用具は、原則として同一種目につき年間10万円まで、購入費の支給対象になります。自己負担は所得に応じて1〜3割です。
⚠️ 買う前に、必ず確認してください
介護保険の支給対象になるのは、都道府県などの指定を受けた事業者から購入した場合です。先にインターネットや量販店で自己判断で購入すると、支給の対象にならないことがあります。購入前に必ずケアマネジャーか地域包括支援センターに確認してください。
障害のある方(児)は、自治体の日常生活用具給付の対象になる場合があります(例: 横浜市の重度障害者(児)日常生活用具給付等事業)。また、自治体によっては紙おむつ等の給付品目に清拭剤やドライシャンプーが含まれることもあります(例: 川崎市のねたきり高齢者等紙おむつ及び日常生活用具給付事業)。お住まいの自治体の制度は地域から探すで確認できます。
用具という選択肢
サービスの回数だけでは足りない気がします。家でできることを増やす道具はありますか。
状況別に、次のような用具があります。どれも「家族の介助を楽にする」ための選択肢の一つです。
状況別・入浴を助ける用具の例
- 浴室までは行けるが、立ち座りが不安 → シャワーチェア・浴槽用手すり(介護保険の購入費支給の対象)
- ベッドから動くのが難しい → ベッド上で洗身・洗髪ができる機器(例: スイトルボディ)
- 浴槽はあるが、体を洗う介助が大変 → 既存の浴槽に置いて使うマイクロバブル入浴装置(例: どこでもミラバス。工事不要のため賃貸住宅でも使えます)
ただし、用具が合わない場合もあります。ご本人の入浴への拒否が強いとき、皮膚の状態や医療的な管理が必要なときは、道具の前に、かかりつけ医や訪問看護師など専門職への相談を優先してください。また、費用や設置スペースの条件は製品ごとに異なるので、購入前の確認が必要です。
どこに相談すればいい?
結局、最初に誰に相談すればいいのでしょうか。
すでにケアマネジャーがいる方はケアマネジャーへ、まだ介護保険を使っていない65歳以上の方は、お住まいの地域の「地域包括支援センター」が最初の窓口です。障害のある方は、区市町村の障害福祉の窓口に相談してください。
相談時にそのまま使える質問メモ
- 訪問入浴介護は、うちの場合は週何回くらい利用できますか?
- デイサービスの入浴の回数を増やすことはできますか?
- 入浴補助用具を買いたいのですが、介護保険の支給対象になりますか? どの事業者から買えばいいですか?
- うちの自治体に、入浴や清潔ケアで使える給付・助成はありますか?
- 家族だけで入浴介助を続けるのが難しくなってきたことを、ケアプランに反映してもらえますか?
まとめ
| 状況 | 主な選択肢 | 相談先 |
|---|---|---|
| 毎日の全身浴が難しい | 足浴・手浴・清拭・ドライシャンプー | かかりつけ医・訪問看護師 |
| 浴室まで移動できない | 訪問入浴介護(介護保険) | ケアマネジャー |
| 週の入浴回数を増やしたい | デイサービスの入浴+訪問入浴の併用 | ケアマネジャー |
| 用具の購入費をおさえたい | 特定福祉用具販売(年間10万円まで・1〜3割負担) | ケアマネジャー・地域包括支援センター |
| 64歳以下・重度身体障害 | 自治体の入浴サービス・日常生活用具給付 | 区市町村の障害福祉窓口 |
「家族ががんばる」以外の道が、思っていたよりたくさんあるんですね。少し気持ちが軽くなりました。
入浴の悩みは、ひとりで抱えるほど重くなります。この記事の質問メモを持って、まずは一度、ケアマネジャーか地域包括支援センターに話してみてください。