家族

親が週1回しかお風呂に入りたがりません。これで大丈夫でしょうか。毎日入るように勧めたほうがいいですか。

編集部

回数だけで「大丈夫」「足りない」とは判断できません。施設の基準や研究の数字を、そのままご自宅でのノルマにせず、本人の体調と安全、入らない日の清潔の保ち方を一緒に考えましょう。

回数を決める前に知っておきたいこと

  • 施設の運営基準には、週2回以上の入浴または清拭の規定があります。家庭の入浴回数を定めた規定ではありません。
  • 浴槽入浴が多い人ほど、その後の要介護認定が少なかったという観察研究があります。入浴を増やした効果とまでは言えません。
  • 入れない日は、清拭(体を拭くケア)・足浴・手浴・シャワーなどを、体調や介助の状況に合わせて検討します。
  • 体調に不安があれば、回数を増やす前にかかりつけ医へ。介助が続かないときはケアマネジャーへ相談します。

高齢者の入浴は週に何回が目安?

家族

「週2回」と聞きますが、何をもとにした数字ですか。

編集部

介護施設の運営基準にある数字です。e-Gov法令検索で確認できる、指定介護老人福祉施設(介護保険の特別養護老人ホーム)の基準と、介護老人保健施設の基準には、次の規定があります。

施設・根拠条文出典の文言
指定介護老人福祉施設・第十三条第二項「指定介護老人福祉施設は、一週間に二回以上、適切な方法により、入所者を入浴させ、又は清しきしなければならない。」
介護老人保健施設・第十八条第二項「介護老人保健施設は、一週間に二回以上、適切な方法により、入所者を入浴させ、又は清しきしなければならない。」
編集部

これは施設に求める最低限の運営基準で、「湯船に週2回入る」という意味でもありません。引用した規定は入浴または清しき(清拭)としています。施設の類型によって条文も異なるため、すべての施設に同じ説明を当てはめることも避けたいところです。

編集部

ご家庭では、本人の体調、皮膚の状態、希望、介助する人の負担を伝え、回数と方法を相談しましょう。施設の数字だけで、家族の介助が足りないと考える必要はありません。

毎日入ったほうがいい? 調査の読み方

家族

毎日入る人は介護が必要になりにくい、という話も気になります。

編集部

JAGES(日本老年学的評価研究)のデータを用いた観察研究があります。原著論文では、日常生活動作が自立している地域の高齢者13,786人を対象に、3年間、新たな要介護認定を追跡しています。調査開始時の浴槽入浴が週7回以上の群は、週0〜2回の群に比べ、年齢や健康状態などを調整した後の要介護認定リスクが約3割低いという関連でした。

編集部

原著の結論は「High tub bathing frequency is associated with lower onset of functional disability.」(浴槽入浴の頻度が高いことと、生活機能障害の発生が少ないことに関連がある、という意味)です。観察研究なので、入浴を増やせば同じ結果になるという因果関係までは言えません。著者らも、健康な人ほど頻繁に入浴するという逆の因果を完全には取り除けないことや、入浴の安全性・リスクをこの研究では調べられないことを限界として挙げています。

編集部

この研究は、すでに介助が必要な親に毎日の入浴を勧める根拠にはできません。「毎日入れないから問題」と受け取らず、安全に続けられる方法を相談する材料にしてください。

週1回しか入れないのは問題?

家族

回数をすぐに増やせないとき、間の日はどうすればいいでしょうか。

編集部

湯船に入る回数と、体を清潔にする機会を分けて考える方法があります。千葉県の、寝たきりで週1回しか入浴できない母親についての質問には、「寝たままで足を洗うことは可能です。」と回答されています。ただし、これは足浴の方法の案内で、「週1回なら誰でも十分」という判定ではありません。

方法検討する場面注意点・詳しい方法
清拭浴室への移動や全身の入浴が難しく、体を拭きたいとき拭く範囲や方法に迷ったら訪問看護師へ。寝たきりの体を洗う方法、清拭の温度と寒さ対策を参照
足浴・手浴(部分浴)足や手など、洗いたい部分をお湯につけて洗うとき全身の清潔をこれだけで補えるとは考えず、ほかのケアと組み合わせて相談。手浴・足浴の方法を参照
シャワー浴浴槽をまたがずに体を洗う方法を検討したいとき浴室への移動や座る姿勢、介助が可能かも確認。高齢者がシャワーだけで済ませるときの考え方を参照
編集部

千葉県は、足を洗い流した後について「流し終えたら、指の間などの水分をタオルでしっかり拭きます。」と案内しています。皮膚の状態や本人に合う洗い方が気になる場合は、かかりつけ医や訪問看護師に確認してください。

冬の入浴で気をつけること

家族

冬は寒いので、回数を増やすのも心配です。

編集部

冬は回数を増やす前に、脱衣所と浴室の環境を確認しましょう。消費者庁は、高齢者の入浴中の事故について、次のように注意を呼びかけています。

冬の入浴前に確認したいこと

  • 「入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。」
  • 「湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。」
  • 「浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。」
  • 「食後すぐの入浴、またアルコールが抜けていない状態の入浴は控えましょう。」
  • 「精神安定剤、睡眠薬などの服用後の入浴は危険ですので注意しましょう。」
  • 「入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう。」
編集部

これらは注意喚起の目安で、守れば誰でも安全という保証ではありません。体調や薬に関する不安は、かかりつけ医に相談してください。暖め方の検討は脱衣所が寒いときの対策も参考にしてください。

入る時間帯と長さ

家族

夜にこだわらなくてもよいのでしょうか。

編集部

岐阜県のヒートショックに関する注意喚起では、「夕食前・日没前の入浴」が挙げられています。本人の体調に加え、部屋を暖められ、家族が見守れる時間を相談してみましょう。湯につかる長さは、前述の消費者庁の「10分までを目安」という注意を参考にし、長く入ることを目標にしないでください。

回数を増やしたい・家族だけでは続かないとき

家族

本人はもっと入りたいそうですが、家族の介助が続きません。

編集部

ケアマネジャーに、入浴を支えるサービスの利用を相談しましょう。厚生労働省の案内では、デイサービスは施設に通って食事や入浴などの支援を受けるサービス、訪問入浴介護は看護職員と介護職員が自宅を訪れ、持参した浴槽で入浴を介助するサービスとされています。

編集部

利用できるサービスや回数は、本人の状態やケアプラン、地域の事業所の受け入れ状況を確認して決めます。自治体独自の支援制度は自治体によって異なります。家族が介助できる日や、負担に感じている動作も相談時に伝えてください。

入浴を嫌がるとき

家族

介助の準備ができても、本人が嫌がる日があります。

編集部

回数を増やす話の前に、何が嫌なのか、本人の言葉を聞いてみましょう。寒さや介助の仕方など、気になることをケアマネジャーと共有してください。声のかけ方や選択肢は認知症の家族が入浴を嫌がるときにまとめています。

どこに相談すればいい?

編集部

体調に合う回数や方法は、かかりつけ医へ相談してください。清拭や部分浴のやり方、皮膚の状態は、利用している訪問看護の看護師にも相談できます。サービスの組み合わせはケアマネジャーへ、相談先がわからない場合は地域包括支援センターに尋ねましょう。

相談時にそのまま使える質問メモ

  1. 本人の体調や薬を踏まえると、入浴の回数・湯温・長さはどう考えればよいですか?
  2. 入浴できない日は、どの部分をどんな方法で洗ったり拭いたりすればよいですか?
  3. 冬の入浴時間帯と、脱衣所・浴室の準備で気をつけることはありますか?
  4. 本人が嫌がるとき、入浴方法や声のかけ方を一緒に考えてもらえますか?
  5. 家族の介助が続かないので、デイサービスや訪問入浴をケアプランに組み込めますか?

相談までに用意すること

  • 入浴した日だけでなく、清拭や足浴をした日もメモする
  • 本人の希望と、家族が介助で困る場面を書き添える
  • メモをかかりつけ医やケアマネジャーに見せ、次の入浴方法を相談する

まとめ

制度名・支援/確認する資料窓口・相談先注意点公式リンク
指定介護老人福祉施設・介護老人保健施設の運営基準利用している施設施設の基準を家庭のノルマにしない福祉施設の基準/老健の基準
入れない日の足浴・手浴訪問看護師・かかりつけ医全身のケアとの組み合わせを相談する千葉県の回答
冬の入浴に関する注意喚起かかりつけ医湯温・時間の目安だけで安全を判断しない消費者庁
通所介護(デイサービス)ケアマネジャー入浴の対応や利用方法を事業所に確認厚生労働省の案内
訪問入浴介護ケアマネジャー本人に合う利用方法を相談厚生労働省の案内
家族

回数だけで考えず、入らない日のケアと、家族が続けられる方法も相談してみます。

編集部

本人の希望と体調、介助の負担を一緒に伝えてください。毎日の入浴を目標にする前に、無理なく清潔を保つ方法を相談しましょう。

出典・参考