親の陰部を洗うように言われたのですが、家でどうすればいいのでしょうか。トイレで洗えるのか、ベッドでするのかも迷っています。
家でのやり方は、本人に合う方法を教わってから
- 陰部洗浄は、陰部を湯などで洗い流し、清潔を保つためのケアです。タオルなどで拭く「清拭」とは動作が異なります。
- 公的な介護教材には、ボトルに入れた湯で洗い、乾いたタオルで水分を拭く例があります。
- 以下は介護職・医療者向け教材の手順例です。家庭での姿勢・回数・石鹸の使い方は、訪問看護師などに本人の状態を見て教えてもらいましょう。
- 赤みやただれ、痛みなどがあるときや、カテーテルが入っているときは、自己流にせず相談してください。
初めてなら「自宅のトイレかベッドで、家族が行う方法を見せてほしい」と、訪問看護師やケアマネジャーに伝えてください。ここでは、新潟市公開の介護教材や厚生労働省の資料などで確かめられた要点を紹介します。新潟市の教材は介護職向けで、家庭にそのまま当てはめる手順書ではありません。
陰部洗浄は何のためにするの?
おむつを替えるときに拭くだけでは、違うのですか。
新潟市の教材には、「陰部は、排泄物や発汗で汚れやすい部分です。」とあります。汚れを落として清潔を保つケアとして、同教材ではシャワーボトルに入れた湯で洗う例を示しています。厚生労働省の介護技能実習の資料にも、おむつ交換の項目にボトルでの洗浄とタオルなどでの清拭が記載されています。
清拭はタオルなどで拭く方法、洗浄は洗い流す方法です。拭くケアで困っている場合は、清拭だけだとにおいが残るときの選択肢も参考になります。においが強い場合は、洗い方だけで対処しようとせず、かかりつけ医や訪問看護師に相談してください。
毎日するもの? 回数はどれくらい?
毎日するのでしょうか。おむつ交換のたびに洗ったほうがよいですか。
この記事で参照した教材からは、自宅の家族介護で「毎日何回」「交換のたび」とする回数までは決められません。「全員に決まった回数はない」という一般原則も、今回の資料だけでは確認できませんでした。排泄の様子や皮膚の状態を訪問看護師に伝え、洗うタイミングと回数を確認しましょう。
ケアマネジャーには、その回数を家族だけで担えるかも相談してください。「夜の交換まで毎回は難しい」など、実際に困る場面を伝えると、支援の組み合わせを相談しやすくなります。
準備するもの
専用の道具を買いそろえる必要がありますか。
まず、教えてもらう方法に何が必要か確認しましょう。次の表は、教材に登場する道具と湯の目安です。家庭にある容器での代用や、その洗浄・保管方法までは確認できていないため、購入や代用の前に看護師へ聞いてください。
| 用意するものの例 | 出典で確認できること | 自宅で確認したいこと |
|---|---|---|
| 湯 | 新潟市の教材は「準備する湯の温度は人肌程度にします。」と記載 | 本人に合う温度と確認方法 |
| 洗浄用のボトル | 新潟市の教材に、シャワーボトルに入れた湯で洗う記述 | ボトルの選び方・手入れ・保管 |
| 使い捨て手袋 | 新潟市の教材は「感染防止のため使い捨て手袋を使用します。」と記載 | 自宅で使う手袋と交換のタイミング |
| 乾いたタオル | 新潟市の教材に、洗った後の水分を拭く記述 | 必要な枚数や置き場所 |
| 防水シーツ | 新潟市の教材のおむつ交換の例に記載 | ベッドや寝具に合わせた敷き方 |
| 便器、洗うためのタオルやガーゼ、石鹸 | 中部学院大学の医療者向け手順例に記載 | その方法・道具が本人に必要か |
中部学院大学の資料は、患者に便器をあてて行う例です。表のすべてを家庭でそろえる、という意味ではありません。
洗い方の流れ
どんな順番か、先に知っておきたいです。
次は、新潟市の教材のおむつ交換と「陰部の清潔」の項目をもとにした流れです。ベッド上でのおむつ交換に合わせて洗う例であり、本人に合う姿勢の取り方や介助人数は看護師に確認してください。カテーテルが入っている人には、この例を自己判断で当てはめないでください。
| 流れ | 教材で示されている要点 |
|---|---|
| 1. 本人に説明する | 何をするか説明し、同意を得る。厚生労働省の資料には、カーテンやスクリーンでのプライバシーへの配慮もある |
| 2. 手と道具を準備する | 新潟市の教材には「手袋をしていても手は洗います。」とある。陰部のケアには使い捨て手袋を用いる |
| 3. 教わった姿勢を取り、防水の準備をする | おむつ交換の例では、防水シーツを敷き、おむつのテープを外してから洗う |
| 4. 湯で洗う | シャワーボトルに入れた湯を用いる。湯は「人肌程度」とされ、中部学院大学の例にも「温度を確認し、陰部に湯をかける」とある |
| 5. 水分を拭き取る | 新潟市の教材は「洗浄後は、乾いたタオルで軽く押すように拭きます。」と記載 |
男性と女性では、洗う向きが違うのでしょうか。
新潟市の教材には、女性は「女性の場合、尿道から肛門に向かって洗い拭きます(感染予防)。」とあり、男性については睾丸の後ろの拭き方が示されています。男女それぞれの細かな動作は、看護師に実演してもらいましょう。
本人ができる部分については、同教材に「できるところは利用者にしてもらいます。」とあります。「自分で洗いたいところはありますか」と声をかけ、どこを手伝うか確認しましょう。石鹸を使う場合のすすぎは、下の節のとおり、家庭での手順を教わってください。
トイレやポータブルトイレで洗うとき
座れる親なら、トイレで洗ってもよいですか。立てる場合はどうでしょう。
厚生労働省の資料では、トイレ・ポータブルトイレの排泄介助で、安定して座れていることの確認や、衣服の上げ下ろしでの「転倒防止の配慮」を挙げています。ただし、これは排泄介助の要点で、座ったまま湯をかける位置・量や、立って洗う方法までは確認できませんでした。「立てる・座れるから家族だけで洗える」と判断せず、自宅のトイレでの姿勢と介助方法を看護師に確認してください。
湯の温度も、ベッド上と同じく事前に教わる項目です。便座や手すりなどの環境は、ポータブルトイレの選び方を参考に、ケアマネジャーへ相談できます。
お湯だけでいい? 石鹸は?
石鹸を使うとしみないか心配です。お湯だけでもよいですか。
新潟市の教材のおむつ交換の例は、湯で洗う記述です。一方、中部学院大学の医療者向け手順例には、「タオル(ガーゼなど)に湯をかけて石鹸をつけ」という記述があります。この違いだけから、家庭でも「お湯だけで十分」「毎回石鹸が必要」とは言えません。
石鹸を使うか、使う範囲・頻度・種類、すすぐ方法や量は看護師に確認してください。今回の資料では、家庭でのすすぎの具体的な手順まで確認できませんでした。しみる、痛がるなどの場合は自己流で続けず、かかりつけ医や訪問看護師に相談しましょう。
こんなときは自己流にしない
洗い方を変える前に、医師・訪問看護へ相談する場面
- 皮膚の赤み・ただれ・出血がある
- においが強い、痛がる、触らせない
- 尿を出すための管など、カテーテルが入っている
原因を家族だけで判断したり、自己流で洗い続けたりせず、かかりつけ医・訪問看護師に相談してください。ケアマネジャーにも、清潔のケアが難しいことを伝えましょう。このページでは、カテーテルがある場合の洗浄方法は扱いません。
新潟市の教材にも、「皮膚の観察を行い発赤などがあったら、医療職に報告します。」とあります。相談するときは、いつから、どこに変化があるか、洗うときの本人の反応を伝えてください。
家族がしなくてよい方法もある
家族が陰部に触れるのを嫌がります。私も毎回続けるのがつらいです。
家族以外にケアを頼めるか、ケアマネジャーへ相談してよい場面です。厚生労働省の介護サービス情報公表システムには、次の支援が記載されています。陰部洗浄をどの場面で頼めるかは、本人の状態やケアプランに合わせて確認してください。
| サービス | 公的な説明の文言 | 相談すること |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 「食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)」 | おむつ交換や清潔のケアを組み込めるか。厚生労働省の説明 |
| 訪問看護 | 「排泄、入浴の介助、清拭、洗髪など」。主治医の指示に基づく | 皮膚の状態に合うケアや、家族への方法の説明。厚生労働省の説明 |
| 通所介護(デイサービス) | 「食事や入浴などの日常生活上の支援」 | 利用中に陰部の清潔のケアを頼めるか。厚生労働省の説明 |
それぞれの概要は、訪問介護でできること・できないこと、訪問看護とはでも確認できます。相談しても負担をうまく伝えられない場合は、ケアマネジャーの変更を考えるときの相談方法も参考にしてください。
どこに相談すればいい?
訪問看護を使っていない場合、最初はどこへ連絡すればよいでしょうか。
担当のケアマネジャーがいれば、「陰部洗浄の方法を教わりたい」「家族以外に頼みたい」と伝えましょう。赤み・痛みなどがある場合やカテーテルが入っている場合は、かかりつけ医へ相談してください。介護認定を受けていない方の相談先として、日本訪問看護財団の案内は地域包括支援センターなどを挙げています。
同財団は訪問看護について、「ご本人だけでなく、ご家族の介護相談や健康相談にも応じます。」と案内しています。自治体によって相談体制や手続きは異なりますので、地域の窓口で利用につながる方法を確認してください。
相談時にそのまま使える質問メモ
- 自宅のトイレとベッドでは、どちらで、どんな姿勢で洗うのが本人に合いますか。家族の動作を見せてもらえますか。
- 排尿・排便のあと、いつ洗えばよいですか。毎日の回数や、おむつ交換時の対応を教えてください。
- 湯の温度と確認方法、ボトル・手袋・タオルなどの選び方や手入れを教えてください。
- 石鹸は使いますか。使う範囲・頻度と、すすぎ・水分の拭き取りを教えてください。
- 赤みや痛みが出たらどこに連絡しますか。家族が難しい分を、訪問介護・訪問看護・デイサービスに頼めますか。
まとめ
| 場面 | やり方の要点 | 注意点 | 相談先・公式資料 |
|---|---|---|---|
| ベッド上でのおむつ交換 | 教材にはボトルの湯で洗い、乾いたタオルで水分を拭く例 | 家庭での姿勢と道具は実演を依頼 | 訪問看護師/新潟市の教材 |
| トイレ・ポータブルトイレ | 安定した座位や転倒への配慮を確認 | 湯をかける位置・量や立位での方法は自己流にしない | 訪問看護師・ケアマネジャー/厚生労働省の資料 |
| 回数・石鹸に迷う | 排泄や皮膚の状態を伝えて方法を確認 | 教材だけで家庭の回数や洗剤の使い方を決めない | 訪問看護師・かかりつけ医 |
| 赤み・ただれ・出血・強いにおい・痛み、カテーテルがある | 医療職へ相談 | 自己流で洗浄を続けない | かかりつけ医・訪問看護師 |
| 家族が担うのが難しい | 清潔のケアをサービスへ頼めるか相談 | 個別に頼める内容を確認 | ケアマネジャー・地域包括支援センター/訪問介護の説明 |
回数や道具も含めて、家での方法を一度見せてもらうよう相談してみます。
「どこまでなら家族ができるか」も一緒に伝えてください。本人が受け入れられる方法と、家族が続けられる支援を相談しましょう。
出典・参考
- 新潟市公開・介護の日本語テキスト(日本介護福祉士会作成):おむつ交換、陰部の清潔、手洗い、本人への説明・自立支援。
- 厚生労働省・介護技能実習の資料:排泄介助、プライバシー、座位・転倒への配慮。
- 中部学院大学公開・介護・看護の教材:医療者向け陰部洗浄の手順例。
- 厚生労働省・訪問介護、訪問看護、通所介護:サービスの概要。
- 日本訪問看護財団・訪問看護の案内:家族の相談、利用に向けた相談先。
あわせて読みたい:清拭だけだとにおいが残るとき/ポータブルトイレの選び方


