家族

父をベッドから車椅子に移そうとすると、手すりにしがみついて離れなかったり、「やらないで」と拒まれたりします。毎回時間がかかり、無理に進めて転んでしまわないか不安です。

編集部

それは多くのご家族が経験する困りごとです。身体の支え方や腰を痛めないコツについては自宅での移乗介助のコツで詳しく解説していますが、ここでは「なぜ嫌がるのか」という気持ちの面と、その不安を減らす工夫を中心にお伝えします。

この記事でわかる選択肢の全体像

  • 嫌がる・拒否する理由の考え方(恐怖心・痛み・自尊心・混乱)
  • 家庭でできる工夫(声かけの仕方・無理をしない判断)
  • 恐怖心を減らす福祉用具(移乗用リフト・スライディングボード・手すり)
  • 制度・給付(福祉用具貸与・住宅改修費・補装具費支給)
  • 相談先と、そのまま使える質問メモ

まず、嫌がる・拒否する理由を考える

家族

なぜここまで嫌がるのでしょうか。

編集部

いくつかの理由が考えられます。体が宙に浮く感覚への恐怖、関節の痛みや皮膚の突っ張りといった身体的な不快感、そして「できていたことを人に頼る」ことへの自尊心の問題です。認知症がある場合は、「今から何をされるのか」がわからず、驚きや混乱から抵抗する反応につながることもあります。

家族

「わがまま」ではなく、理由があるということですね。

編集部

そうです。国立長寿医療研究センターのQ&Aでも、介護拒否が強いときの対応として、その場は無理強いをするのではなく、本人の要求に耳を傾け、可能であればその通りにしてあげることが紹介されています。強引に進めることは、本人の不安を強めるだけでなく、次回以降の介助をさらに難しくすることにもつながります。

⚠️ その場での「成功」にこだわらない

拒否が強いときに無理に進めることは、転倒などの事故リスクを高めます。いったん時間を置く、声かけの言葉を変える、家族以外の人に代わってもらうなど、その場で終わらせようとしない判断も大切です。

家庭でできる声かけの工夫

家族

具体的には、どんな声かけがいいですか。

編集部

国立長寿医療研究センターのQ&Aでは、認知症の人への接し方の基本として、短く簡潔な表現を用いて一度に多くの指示をしないこと、訂正や否定的な表現ではなく肯定的な表現を用いること、本人の目を見る・微笑む・相槌を打つといった非言語的コミュニケーションを使うことが示されています。移乗の場面では、次のような工夫に置き換えられます。

移乗前に試したい3つの声かけの工夫

  • 動かす前に「これから車椅子に移りますね」と一言伝え、本人が身構える時間を作る
  • 「せーの」など同じ合図を毎回使い、次に起こることを予測しやすくする
  • 表情や声のトーンをやわらかくし、急かさず本人のペースを待つ
編集部

あわせて、移乗前に痛む部位がないか確認しておくことも有効です。衣類のしわや医療用テープの引っかかりなど、小さな不快感を取り除いておくだけで、拒否の原因そのものが減らせることがあります。

恐怖心を減らす福祉用具・制度

家族

声かけだけでは難しいと感じています。

編集部

そのとおりです。恐怖心や痛みは、声かけの工夫だけでは解消しきれないこともあります。体が宙に浮く感覚が少ない移乗用リフトや、座ったまま滑らせて移動できるスライディングボードを使うと、本人の「落ちるかもしれない」という恐怖心そのものを減らせる場合があります。要介護認定を受けている方は、これらを介護保険の福祉用具貸与で借りられることがあります。

家族

家の中に、つかまる場所を増やすことはできますか。

編集部

介護保険の住宅改修費支給制度を使って、手すりの取り付けなど住環境を整える方法もあります。障害のある方の場合は、車椅子などの補装具費支給制度や、自治体独自の日常生活用具給付の対象になることもあります。福祉用具貸与・特定福祉用具販売の違いは福祉用具貸与と特定福祉用具販売の違い、身体の支え方の基本は自宅での移乗介助のコツにまとめています。

⚠️ 自治体によって内容が異なります

福祉用具貸与は全国共通の介護保険の仕組みですが、障害福祉の補装具費支給・日常生活用具給付は、対象品目や自己負担額が自治体ごとに異なります。お住まいの自治体の制度は「移動・移乗」で使える制度・用具から確認してください。

どこに相談すればいい?

家族

結局、最初に誰に相談すればいいのでしょうか。

編集部

すでにケアマネジャーがいる方はケアマネジャーへ、まだ介護保険を使っていない方は、お住まいの地域の「地域包括支援センター」が最初の窓口です。障害のある方は、区市町村の障害福祉の窓口に相談してください。次のようなサインがあれば、早めの相談をおすすめします。

専門職への相談を検討したいサイン

  • 拒否が強く、決まった介助者以外では対応が難しい
  • 痛みが疑われるが原因がはっきりしない
  • 転倒しかけるなど、ヒヤリとする場面が増えている

相談時にそのまま使える質問メモ

  1. 移乗を嫌がるのは、どんな理由が考えられますか?
  2. 移乗用リフトやスライディングボードは、介護保険でレンタルできますか?
  3. 手すりの取り付けなど、住宅改修費の制度は使えますか?
  4. 訪問リハビリや訪問看護で、声かけの仕方を含めた介助方法を指導してもらえますか?
  5. 障害福祉の補装具費支給や日常生活用具給付で使える制度はありますか?

まとめ

状況主な選択肢相談先
なぜ嫌がるのか知りたい恐怖心・痛み・自尊心・混乱という理由を理解する(自己対応。国立長寿医療研究センターのQ&Aも参考に)
声かけを見直したい事前に伝える・同じ合図を使う・ペースを待つ(自己対応)
恐怖心を減らす用具を試したい移乗用リフト・スライディングボード(福祉用具貸与)ケアマネジャー・福祉用具専門相談員
住環境を整えたい手すりの取り付け(住宅改修費支給)ケアマネジャー
65歳未満・障害福祉の対象補装具費支給・日常生活用具給付(自治体ごと)区市町村の障害福祉窓口
家族

「わがまま」だと思っていましたが、理由があったんですね。少し見方が変わりました。

編集部

移乗を嫌がる・拒否する背景には、本人なりの理由があります。この記事の質問メモを持って、まずは一度、ケアマネジャーか地域包括支援センターに相談してみてください。身体の支え方の基本は自宅での移乗介助のコツもあわせてご覧ください。

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