台風のニュースを見るたびに不安になります。父は在宅酸素を使っていて、電動ベッドも電気で動きます。停電になったらどうすればいいのか、何を準備すればいいのかわかりません。
それは心配になりますね。電気で動く医療機器や介護用品を使っている場合、停電への備えは早めにしておくほど安心です。備えは、家庭でできる備蓄から、医療機器の電源確保、自治体の制度まで、段階を分けて考えると整理しやすくなります。
この記事でわかる選択肢の全体像
- 家庭でできる備蓄(水・食料・排泄用品)
- 電気で動く医療機器を使っている場合の電源確保
- 制度・給付(自治体の自家発電機・蓄電池の給付、都道府県の非常用電源整備事業)
- 避難行動要支援者名簿への登録という選択肢
- 相談先と、そのまま使える質問メモ
家庭でできる備蓄から
まず何から準備すればいいでしょうか。
農林水産省は、飲料用と調理用を合わせて一人当たり1日3リットルの水が必要とし、最低3日分、できれば1週間分の食料と水を備蓄するよう呼びかけています。人数分をまとめて用意するというより、普段使っている水や食品を少し多めに買い置きし、使った分を買い足す「ローリングストック」という考え方をすると、無理なく続けられます。
在宅介護の場合は、これに加えて排泄用品の備蓄が欠かせません。紙おむつやパッドは、断水すると洗濯やトイレの使用が制限されるため、日常の使用量より多めに備えておくと安心です。とろみ剤やゼリー飲料など、嚥下(飲み込み)に配慮した食品を使っている場合は、それも普段より多めに用意しておきます。
電気で動く医療機器を使っている場合
父は在宅酸素のほかに、痰の吸引器も使っています。停電したらどうなるのでしょうか。
機器によって対応が変わります。福岡県が在宅で人工呼吸器を使う方とその家族向けにまとめている情報では、「停電時には外部バッテリーが有効です。このため、平時から複数台の外部バッテリーを準備しておきましょう」とされています。酸素濃縮器を使っている場合は、必要に応じて酸素ボンベも準備するよう案内されています。
吸引器については、「充電式(内部バッテリーで作動するポータブル型)か足踏み式、手動式のいずれか」を用意しておくことが勧められています。電動のものだけに頼らない手段を一つ持っておくと、停電が長引いたときの安心材料になります。人工呼吸器を使っている方の場合は、蘇生バッグ(アンビューバッグ)を使った呼吸の介助方法を、日頃から練習しておくことも案内されています。
具体的な機種ごとのバッテリー持続時間や、正しい充電・保管方法は、機器を提供している医療機関や販売会社に確認するのが確実です。かかりつけの医療機関に「停電のときはどう対応すればいいか」を一度相談しておくと、いざというときに落ち着いて動けます。
制度・給付: 自治体の自家発電機・蓄電池の給付
発電機やバッテリーを買うとなると、費用も心配です。
障害のある方や難病患者を対象に、自治体が「日常生活用具給付等事業」の中で自家発電機や外部バッテリーの費用を給付している例があります。たとえば金沢市の日常生活用具の給付では、人工呼吸器等用の自家発電機・外部バッテリー・正弦波インバーターが対象品目に含まれています。原則1割の自己負担で、非課税世帯などは自己負担がかからない仕組みです。
都道府県レベルでの支援もあります。東京都は、都内在住で在宅人工呼吸器を使う指定難病患者を対象に「在宅人工呼吸器使用難病患者非常用電源設備整備事業」を実施しており、自家発電装置または蓄電池のどちらか一方を選んで整備できます(受付期間は例年4月1日から12月末まで)。申請は治療にあたる医療機関を通じて行う仕組みです。
⚠️ 制度は自治体・都道府県ごとに大きく異なります
自家発電機や外部バッテリーの給付は、すべての自治体にあるわけではなく、対象となる障害の種類・程度も自治体によって異なります。この記事で紹介した例がそのままお住まいの地域に当てはまるとは限りません。まずはお住まいの自治体の障害福祉担当窓口に、「日常生活用具給付に電源関連の品目はありますか」と確認してください。
避難行動要支援者名簿への登録という選択肢
停電が長引いて避難が必要になった場合も心配です。
「避難行動要支援者名簿」という制度があります。内閣府によると、これは「災害時に自ら避難することが困難な高齢者や障害者等」の情報を市区町村があらかじめ整備し、災害時の避難支援に活用する仕組みです。多くの自治体では、要介護3以上の認定を受けている方や、身体障害者手帳をお持ちの方などが対象になります。
対象要件に該当すると自動的に登録される自治体もあります。たとえば足立区の避難行動要支援者名簿では、要介護3〜5・身体障害者手帳1〜2級などに該当する方が自動で登録され、新規該当者には案内の書類が郵送される仕組みになっています。すでに対象になっているはずなのに案内が届いていない場合は、自治体の福祉担当窓口に確認してみてください。
名簿への登録に加えて、実際に「誰が」「どこへ」「どうやって」避難を支援するかを具体的に決めておく「個別避難計画」の作成が進められている自治体もあります。ケアマネジャーが計画作成に関わる場合もあるため、心当たりがあれば相談してみるとよいでしょう。
どこに相談すればいい?
何から手をつければいいか、まだ整理できていません。
医療機器を使っている方は、まずかかりつけの医療機関に電源確保について相談することから始められます。制度の利用については、障害のある方は自治体の障害福祉担当窓口、高齢の方はケアマネジャーや地域包括支援センターが窓口になります。すでにケアプランがある方は、次回の担当者会議で防災の話題を出してみるのも一つの方法です。
相談時にそのまま使える質問メモ
- うちで使っている医療機器は、停電時どのくらいの時間バッテリーで動きますか。
- 自治体の日常生活用具給付に、自家発電機や外部バッテリーは含まれていますか。
- 避難行動要支援者名簿に、すでに登録されていますか。個別避難計画は作られていますか。
- 断水したときの排泄用品や医療的ケア用品は、どのくらい備蓄しておけば安心ですか。
- 停電が長引いた場合、どこに連絡すればよいですか(かかりつけ医・ケアマネジャー・自治体窓口)。
まとめ
| 状況 | 主な選択肢 | 相談先 |
|---|---|---|
| 何から備えればいいかわからない | 水・食料・排泄用品のローリングストック備蓄 | 家族での準備 |
| 電気で動く医療機器を使っている | 外部バッテリーの複数台準備、手動式吸引器などの代替手段 | かかりつけ医療機関・機器販売会社 |
| 発電機・バッテリーの費用が心配 | 自治体の日常生活用具給付、都道府県の非常用電源整備事業 | 自治体の障害福祉担当窓口 |
| 避難が必要になったときが心配 | 避難行動要支援者名簿への登録、個別避難計画 | 自治体の福祉担当窓口・ケアマネジャー |
停電が来てから慌てるのではなく、今のうちに確認できることがたくさんあるのですね。
そのとおりです。すべてを一度に揃える必要はありません。まずは水と排泄用品の備蓄、医療機器のバッテリー確認、避難行動要支援者名簿への登録状況の3つから確認してみてください。